COLUMN

バンコクの朝食会場で見た、子どもを見守るホテルスタッフの関わり

Kyoko

新型コロナウィルスの流行によって、海外に行く機会がなくなり、とても寂しく思う日々を過ごしている人は多いのではないでしょうか?私も海外に行けず寂しいと感じているひとりです。

歴史あるマンダリンオリエンタルバンコク

少し前の話になりますが2017年夏、はじめてタイのバンコクに滞在した時のことをお話してみようと思います。

その時に滞在したホテルはマンダリンオリエンタルバンコク。1876年に創業された、老舗ホテルのひとつになります。

少しホテルを歩くと、上皇上皇后両陛下が天皇皇后両陛下であった時代にも訪れた写真が残されていました。今は亡きダイアナ妃の写真もあり、少しの間写真を眺めてその場所を去りました。

マンダリンオリエンタルバンコクのエントランスは特徴的。高い天井から吊るされたシャンデリアのような花飾りが大きくお出迎えしてくれます。ホテルは季節によって装飾を変え、訪れたゲストを季節ごとのもてなしで楽しませてくれます。

ホテルにとってエントランスは「そのホテルの持つホテルらしさ」を表現する場所のひとつ。エントランスに入った瞬間に包まれる湿気をまとったジャスミンの香りは、1度脳内にインプットされると忘れることのできない甘さと豊かさを持っていました。

私自身ホテルの滞在記を書き綴るとき、インテリアや部屋の設備や間取り、レストランやラウンジなどを描くことも多いのですが、マンダリンオリエンタルバンコクに関して書き残していたいのは、その土地にある文化や習慣によってもたらされる人の優しさでした。

朝食会場にいるスタッフの関わり方の配慮

その日、私はチャオプラヤ川に面した朝食会場のレストランで2日目の朝を迎えていました。朝食はビュッフェタイプで、メインの卵料理はオムレツや目玉焼きなどから選ぶことができます。せっかくタイに来たのだからと、タイの卵料理のひとつ「カイジャオ」をいただきました。

周りを見渡すと、ヨーロッパや欧米から来られている方が多く、ご家族で滞在されている方も目にすることが多かったように思います。

ご家族でテーブルを囲み、小さい子どもたちと朝食を食べる姿。甘いドーナッツを口を汚しながら食べる姿はとても可愛らしく、周りのテーブルに座っている大人達もついつい笑顔になってしまいます。

マンダリンオリエンタルバンコクでは、ホテルスタッフさんたちが泣いてる赤ちゃんや走り回ってる子がいると一緒に遊んだり、あやしている姿を滞在中何度も見かけました。その姿がとても印象的で、思わず撮影した一枚がこちらです。

お母さんが食事をしながら「すみませーん!」というのを、「いいのよー!気にしないで食べちゃって!」のような会話をされていたのだと思います。(会話は想像ですが…)

彼女はずーっと赤ちゃんに笑いかけ、足を持ってリズム遊びをずっとしているんです。赤ちゃんをあやすのが本当に上手。彼女が遊んでいる姿を周りのスタッフも見守ったり、通りかかると一緒にかわいいよねーと談笑したり。子どもを中心にコミュニケーションがまた生まれるという循環。

スタッフが一緒に遊んでいるからか、周りのテーブルのお客様も、料理を取りに歩いている他のお客様も!一緒に「いないいないばぁ」をしたり、笑顔で手を降ったり。

子どもたちが泣いても走っていても、危なければ声はかけるけれど叱ったりはしない、むしろみんなで子どものいる空間を楽しむという姿がレストラン全体を包んでいました。

これって大切な配慮だと思うのです。子ども連れのご家族も朝食を楽しめる。パートナーと2人っきり、穏やかな朝を迎えたい人も心地よく過ごすことができる。お互いを大切にする潤滑油としてスタッフさんが存在してるんですよね…

子育て中の食事は周りの目が気になる

私も子どもがいるので、子どもを連れての食事が本当に大変なのは経験があります。座っているだけの状態ならまだどうにか…食べてウトウトしてくれている間にご飯をかけこんだりするのは日常茶飯事。

周りに助けてくれる大人がいて、順番に抱っこしながら交代で食事をすることもできますが、歩き回れるようになるともう大変。歩きまわることはもちろんないけれど、周りに迷惑かけてないかな?うるさくないかな?と周りをキョロキョロして、申し訳ない気持ちで食べることも少なくありません。

もちろんお行儀よくいられることが一番かもしれませんが、子どもが集中して食べていられる時間は短く、食べ終わってしまった後は、どこかに行きたい気持ちでうずうずしてしまいます。

大人は子どもにスマホを与えたり、iPadでゲームやYouTubeを観てもらっている間に、ご飯を食べるというのは本当に仕方ないと思うのです。味わうなんて二の次なんです。お行儀悪くてごめんなさい。

子どもを産む前は、食事中にiPad見せて何してるんだろう…と思っていたことも正直ありましたが、今なら分かります。iPadを見てもらっている間に食事をかけこむしかないんだ…と。

走り回って誰かに迷惑をかけるよりも、この方がいいんだ…と思ってしまう状況がそこにはあるんですよね…

だからこそ、バンコクの朝はなんだか優しい気持ちでいっぱいになりました。みんなで子どもを見守る空間がそうさせたのだと思います。こんな空間だったら申し訳ない気持ちでいっぱいになって、外に出るのが億劫になることなく、食事を一緒に楽しめるのかもしれない…と感じたのです。

子どもたちも決してうるさくしたいわけでもなく、声が高くて、大きいだけ。興味が湧いた世界に飛び込んで、大人から相手をしてもらって、心が満たされて、パンを片手にまた席に戻って、また食べ始める。さっきまでの姿は仮の姿なのか?と言いたいくらいに…

もちろん、誰かに迷惑をかけていたり、完全に子どもを放置とかはちょっと話は変わってしまいますが…みんな一生懸命にしている中でのしょうがないことを穏やかに受け入れるという心の余裕って大切だな〜と思うのです。

(何度も申し上げますが、他のお客様に迷惑はかけてはいけないのは大前提ですが…)

ですが、あの日、あの朝の空間は「子どもってそういうもんだよね」「楽しんでいいんだよー!」って、スタッフやそこにいるゲストみんなから言ってもらってるようで、そんな会場で時間を過ごすことができて私も幸せな気分をお裾分けしてもらいました。

子連れで旅をする…ってとても大変。食事の場で、お行儀よくしてほしいって多くの親が思っていると思うし、外で食べても恥ずかしくないように、家でも色々教えていると思うのです。

それでも、旅に出ると興奮してしまったり、いつもより外でおどけてみたり、はしゃいでしまうのも子どもの愛らしさ。その姿を、そういうことってあるよね〜!みんなで見守っていこう!って、思える温かい心と思いやりをマンダリンオリエンタルバンコク受け取って帰ってきました。

優しさのバトンとお互いに思いやる気持ちを…

ホテルという場所は、パートナーやカップルで楽しい思い出のひとときを過ごしている方、出張や仕事で来ている方、いつも忙しくしていてリフレッシュで訪れている方、家族旅行で訪れている方、背景は本当にさまざま。

その中で、一緒に空間を過ごす人にとって心地よいものとなるように、みんながお互いを思いやりながら、優しい気持ちで滞在できたら、ホテルという場所はこうして優しさに包まれた温かい空間になるのだと、マンダリンオリエンタルバンコクのスタッフ皆様から優しいバトンを受け取りました。

ホテルという場所はたくさんのエネルギーに溢れている場所。息子がもう少し大きくなったら一緒に訪れ、この世界に触れることができたらと思っています。

ABOUT ME
服部恭子
服部恭子
広報・ホテルライター
一流の接客に触れるためホテルに年間100泊以上するホスピタリティ研究家/ ホテルという場所が大好きで「ホテルを好きな人を増やしたい!」という気持ちで言葉を紡いでいます。
記事URLをコピーしました